さ魔よい50周年記念原画展 大橋学Q&A Part1


2013年9月21日、ファンのためのミニトークの後は大橋学が質問に答えるQ&Aコーナー、PART1~2でご紹介します。

 

2013年9月21日
会場/ギャラリィ・ゴーシュ
司会進行/なみきたかしさん
写真/アニドウ・フィルム 、なみきたかしさん 金子由郎さん

Q&Aコーナー

宝島最終回秘話からUFOのことまで!語ります!


Q1.  宝島の最終回について質問です。宝島の最終回、大橋さんがクレジットなしでラストシーン付近の原画を描かれたという話を耳にした覚えがあり、クレジットなし・諸般の理由で話せないということもお有りかもしれませんが、よろしければその時の裏話、経緯や思い出、描いてる側の大橋さんはどんな気持ちだったかを教えていただきたいです。 (質問者:ネタケ=ネコムさん)


大橋 ジムが青年になったところの後半Bパートの約25カット位、そこだけ頼まれました。

(補足:正確にはBパート73カット担当。)

最後のシルバーの振り向きも含めて描いたんですけど、最初の日に20カットわぁ~っと描いちゃって、最後にシルバーが振り向くところを描き終えて約1日半くらいかな?今日もしかしたら当時のコブラとか世界昔ばなしとかを毎日のようにうちに取りに来てた担当さんが来る予定だったんですよね。その人に聞けたら非常に面白かったんだけど、取りに来た時いきなり20カット渡して「凄いですね~!20カット!」って言われたんだけど「全部止めだから。」って言ってね。

後半に腕相撲を酒場でするシーン、あれは止めなので一日で20カット出来ちゃいました。

それで最後のシルバーの振り向くところまで確かにやっているんですけど、当時アニメージュか何かに杉野さんがあれを泣きながら描いた、って書いてあってね。あれ描いたの俺なんだけどな?っていうのはありました。どうして泣くのかな~?って不思議に思ったんですけどね。内心人の原画の上で泣かないでよ(笑)ってね。あれは名前も出なかったんでどうしてかな、って思ってるんですけどね。

(補足:最終話のみACTから頼まれた事により名前が出なかったと判明。)


Q2. アニメーションの作画のこの部分に注目すると、よりアニメを楽しめるといった作画の鑑賞ポイントはございませんか?(質問者:くまさん)


大橋 そうだね~、監督だったらあるかもしれないね。ただアニメーターとしては自分のやったシーンで自信を持って見せられるカットは見て欲しいけどね。

金の鳥の時、福島さんに言ってたんだけど1カット成功したらいいな、っていうふうに言ってたんですよ。

それから10年20年後に福島さんもおんなじこと言ってるんでね、言葉って伝染するんだなぁ~っ伝送されて育つんだなぁって思ったことがあります。

まぁ全カット成功するっていうのは難しいんで、1カットだけでも自分の中でやったな、っていうのがあればだいたい成功だと思いますね。


Q3. ロボットアニメの戦闘シーンの作画のご依頼があっても、さすがにお受けにならないと思いますが、どのような基準でお受けになる仕事を決めていらっしゃるのでしょうか?(質問者:くまさん)

 

大橋 あ、いい質問です。例えば「ボビーに首ったけ」っていう作品は中学時代大好きだった音楽と同じタイトルだったの。だから原作がどうとかキャラクターとかは関係なくて即、やります。って。その音楽が大好きだったっていうだけね。

ゴルゴ13の産みの親のさいとう・たかをさんの劇画集団、さいとうプロは独り立ちできるような人たちが10人くらい集まって共同で仕事してたんですよね。アニメーターと違ってトレス台みたいなのじゃなくって棚のない机でね。

話が違っちゃうけどさいとうさんとアニメの話をしましたね。

アニメはどうですか?と聞いてみたら「いや、アニメは金がかかるから駄目!」と言ってました。その後ゴルゴ13がアニメになって・・・最初のゴルゴ13の話が出た時に中学の時に大好きだったもんで出﨑さんにこれは絶対やります!って言いに行きましたからね。使命感みたいなものを感じたんですよね。

 

全てがそうではないんだけど、例えば宝島は家なき子が終わった後で一年間本当に疲れ果ててアニメを辞めたかったんだけど、出﨑さんのたった一言で呼び止めるというか引き戻されるというかね、辞めようとすると常に呼び戻されるっていうのがあるんです。

引き戻される事がなければとっくにいなくなるようなアニメーターだと思います。

ジョーの時も引き戻されたっていうのはありますね。これはなんとしてもやらなくては、っていう思いはありました。出﨑さんと関わるようになったのもあるんですけど自分も含め、みんなが絶対にこれはやらなくては、っていうふうに思ってましたね。当時のジョーはオープニングのイントロから釘付けになりましたから、完全にファンの立場です。それから10数年してジョー2があるとは思いませんでしたが、年月を超えて呼び戻されたのがあしたのジョー2です。

基準としては作品を選ぶ時は何か一つ惚れる要素がある、っていうことですね。

 

Q4. 大橋さんがキャラクターデザイン&作画監督を務めた作品「ちびねこトムの大冒険」ですが、井上俊之さん、沖浦啓之さん、新井浩一さん等の豪華原画陣とのエピソードが有ったら是非、伺わせて下さい。(質問者:ちびねこトムの大冒険さん)


大橋 ちびねこは夏休みから始まって夏に終わって、本当に珍しい一年間でしたね。プロセスとしては本当に楽しかったですよ。

アニメーターも最初から全員揃っていたわけではなく、途中で抜けてしまったけど森本晃司さん達中心メンバーがいて、途中から沖浦さんらが参加して、そのつどそのつどビックリするような原画を描いてくれるのね。

原画の人達との関わりの中で、先は分からないけど全体がゴールまで向かって楽しくいけたかな?っていう感じなんです。

答えになってるかな?


Q5. なんでUFOは真っすぐ飛べないんですか?なんで大橋さんはUFOが好きなんですか?大橋さんはUFOを見た事がありますか?ちなみに僕も大橋さんを真似て機会を狙ってアニメでUFO飛ばしてます。アダムスキー型が好きです。(質問者:コバヤシオサムさん)


大橋 宇宙人に聞いたところによると止まる事は出来るんだけどフットワークです。左右の木の葉運動ですね。

中の人はちゃんと重力があって目が回っちゃうわけじゃなくって真っ直ぐ立つことができるの。

飛ぶという概念ではなくって宇宙の波に乗るんです。斜めっぽいですよね。あちこちでリアルなつもりで描いてますよ。

UFOは好きですよ。UFOは過去にいっぱい見ちゃったんでね。興味なくなったんじゃなくって見えなくてもその辺を飛んでるっていうのは感覚的に思ってるんで、あんまり気にしてないですね。

昔は雲を見上げた時出てこないかな~なんて思ってましたけど今はたまたまいてくれたらいいな、ってくらいです。

脱線するとですね、星と星があって、人間と人間に例えてもいいんですけど波紋のように輪が広がってるんですよね、何でも物体は放射してるんです。そこで波紋と捉えると輪っかが出来るでしょ。輪っかと輪っかの接点がちょうどニュートラルな楕円形になるんですよ。人と人も星と星も中立ゾーンになるんですよ。

それがどっちかに傾くとス~っと流れに乗ってそっち側に行けるようになるんですよ。UFOがね。だから流れに乗る、ってことなんですけど。

もう少し蛇足すると楕円をいっぱい書いた人がいて、円と円がたくさん繋がると花が咲くように見えるんです。

円と円とがぶつかったところに円をどんどん増やしていくとちょうど宇宙に見えない楕円の花が咲くようになる、っていうそういう図があって面白いな~と思った。


なみき さすが50年ですね。よく昔こういうアニメーターいました。僕の先輩にもこういう人いましたんで非常に馴染みがあります。「僕200回見たから。呼んであげるよ?」なんて言われてね。

昔オープロの屋上に登ってみんなでベントラベントラってぐるぐる回ってたんでUFOはごく普通の日常のことでしたよね。

大橋 金田さんとも話したことありますよ。

なみき あ、ベントラですか?

大橋 UFO繋がりかな?

なみき 小さい頃からみんな大陸書房の本読んで大きくなってるから。たいていみんな好きですよね。やっぱりアダムスキーが好きなんですね?

大橋 そうですね、基本です。

なみき 基本ですよねえ(笑)あれハッキリ上下あるように書いてますけどねぇ。

大橋 上下ありますよ。真ん中に3つの球があるの。


使っている鉛筆のこと、好きな映画のこと


Q6. 使っている鉛筆の柔らかさは何Bでしょうか?またどのような鉛筆の使い方をされているのでしょうか?

あまり紙から離さずグリグリと描かれているイメージがありますが・・・。 (質問者:首藤武夫さん)


大橋 小田部さん木村さん大工原さん、昔はだいたいみんな4Bか5Bでしたね。濃くて力が入ってて個性があってね、やっぱり原画がアートだったんでね。自分はそれを真似ていたんです。

自分が一番真似たのは木村さんですけど、小田部さんは真似られないくらいいい線だな、って思っていました。

その後はだんだん原画も細かくなっていって、コブラの時はコスチュームも細かくなってきたんで、あの時はFでしたね。杉野さんも含め周りがみんなFになっていったので、自分もFで描かないといけないんだ、って。

コブラだけはFだけど、現在は作品と拡大率によるんですけど、Hまでは使わないけどB か2Bの範囲で済ませています。

大きいのは2Bで、レイアウトだけの時は4Bを使います。なるべく大胆にいきたいと思ってますが要求が細かいと鉛筆も細かくなるんでカットの中で使い分けてやってます。

描き方としてはさらっと描いてます。力は入れない方が手にはいいですよ。


Q7. 子供の頃はどうやって絵の練習をされていましたか?どんな絵を好んで描かれていましたか?(質問者:タキザワさん)


大橋 小学校の時はパラパラマンガも描いていたけど、少年画報っていう少年誌の絵を真似していました。

(初めてその漫画に出会ったのは)表紙も破れてボロボロな漫画が栃木の親戚の家の縁側に置いてあって、その漫画の上の方がカラーになっていて、うわぁ~!これは凄いな!って無我夢中になるほど引き込まれました。 (それが後になって少年画報だと分かりました。)

その後は小学校5~6年頃から少年誌の読書欄に似顔絵を無我夢中で投稿していて、学校から帰るとすぐに描いていました。

中学1年の終わり頃、初めは貸し本屋さんにはなかなか入れなかったんだけどやっと入れるようになって、少年誌からいきなり劇画誌や単行本を見るようになって、水木さんの墓場の鬼太郎とか時代劇の平田弘史さんとか、とにかく魅力ある個性的な劇画を片っ端から読んで真似てました。

投稿欄に載るとプロの原画がもらえるんですよ。さいとうたかおさん、ありかわ栄一さん、永島慎二さんのももらいましたね。

必ず封筒に入るくらいの大きさのひとコマ、一段分カットしたものをもらえるんです。今それを大事にとってあるか?っていうとダンボールの中にわぁ~っと入れたまんまです。

自分は小学校5年生までの記憶がないくらい死んでたんですよ。だけど5年の時の先生が「マンガを描いてくれ」って言ってくれたのが凄く嬉しかったね。その先生が絵を認めてくれたおかげで(ああ、自分がここにいるんだ)って気付くことが出来たのね。それまでは眠ってるような感覚でしたけど、先生がきっかけで変わりましたね。


Q8. 好きな映画が知りたいです。絵描き目線で「あの映画のあのシーン、あの空間の切り取り方が印象に残っている」などありましたら。 (質問者:川村ナヲコさん)


大橋 東映動画の身分証で入れる洋画専門の東映パラスっていう映画館が新宿にあって、15歳だったのに大人の白黒の洋画が観れたんですよ。その頃観た映画は良い悪いは関係なく凄く記憶に残ってるね。

題名をあげると「春のめざめ」とか「沈黙」とか。

15歳でこっそり大人の白黒映画を観る、っていうのは貸し本屋を覗くような感覚で楽しかったですね。

フランスのギャング映画もアランドロンも大好きでだいたい観てますね。「冒険者たち」が最後かな。

邦画は東映撮影所でよく撮影風景を見学してたんですよ。「五番町夕霧桜」とか、大事なシーンは関係者以外立ち入り禁止で見れませんでしたけど、そういう大人の世界は面白いですよね。

あとは「シベールの日曜日」とか「かもめ」とかやっぱり白黒の映画ね。「シベールの日曜日」は凄く影響を受けているかもしれないね。戦争で記憶をなくして幼児化した元将校の青年が少女と出会うという純愛ですね。


観客はこの青年と少女に感情移入するんだけど、映画の中では異常な禁断の世界として周りは見ているので、純愛なんだけどラストは悲劇的なんですね。悲劇が好きですね。喜劇はあんまり観ないですね、寅さんとか。

(くまさんからも同様の質問をいただきました。)

カムイの剣の老人のシーン、成功した雪のシーン

 

Q9 . カムイの剣について。展示におじいさんが亡くなるシーンがありますが、他の担当シーンと当時の思い出がございましたらよろしくお願いします。 (質問者:冨田さん)

 

大橋 「老人Z」でも複数のおじいさんを描きましたけど、カムイは昌山っていう一人のおじいさんで、おじいさんになりきりましたね。

登場シーンから全体で20分位、最後の死ぬシーンだけでも10数分、あそこまで全部一人で描いています。

役者のようにやれた、ってよく言うんですけど、役者の仕事ですね。

実写に置き換えて話すと、例えば犯罪者の役をなりきってやったとすると、犯罪者の人生をもう一回生きたような感覚になれるんですよね。他人の人生を自分の中に取り入れることが出来るんで、昌山だったり、火の鳥の老人だったり、自分の中で育って自分の中で完結してるって感じなんで、やりがいがあったなって思ってます。

作画期間10ヶ月なんで、カムイは丁度いい10ヶ月間でしたね。お正月に入ったら秋に終わるんで丁度良かったですね。やりきったな、っていうのがカムイです。

他の担当シーンでは忍者の殺陣もやってるんですよ。村野守美さんがミニコンテ描いてくれたんだけど、主人公に忍者が二人襲い掛かってきてこうかまえてね、それから刀を抜いて二人忍者をバリバリって切るあの辺と、なかむらたかしさんとダブって同じようなシーンもやってたりしてます。

あとはエフェクトもやってます。あれはよく出来たなっていうのは雪のシーンと霧のもや~っというシーンもね。実際作画で描いてるんだけどほとんどダブらせてるからCGみたいには見えないんですけどね、ぼやけてるからね。

あと雪のシーンも最大5枚くらい重ねてやってます。真っ黒な背景の上に点のような雪を降らせて、だいたいあの辺のは自分で描いた雪を使ってくれてますね。他の人の原画のとこまで自分の雪を再利用して使われてます。上から降る俯瞰の雪以外はだいたいやっているので成功した雪のシーンだったなぁ、って思ってます。

雪のシーンといえば世界昔ばなしの十二の月で、ホワイトでたくさんの雪の点々をセルに直接描くっていう実験をしてて、それはそれで上手くいったんで予行練習になったかもしれないね。

カムイはセルではないですけど、雪の降らせ方を友人にスケッチブックに描いて説明したことがあるんですよ。

自分が学んできたことをこうやるんだよ、って説明しても今は全く役に立たないんですね、CGでやっちゃうから。

自分が学んできたことを伝達できないんで、もったいないなぁって思うんだけどね。

火とか水とかはアニメの基本だから本当はもっと描きたいんだけど、今はやりたかったらどうぞ、って感じなのね。火を描かなくていい、って言われたのは「こんにちはアン」の時の地震のシーンでこっち側に火が上がってるって所です。やらなくっていいんです、やりたかったらどうぞ、って言うんで描かせてもらいました。

描かなくていいのはラクですよ?でも描かせてもらいました。

自然現象は大好きですね。それだけで食べてる人もいるでしょうけど、自分はそればっかりって訳にもいかないんで。

実際はなかなか頼まれないんですけどね。