ぱらぱらBee魔an

多数のアニメーターが参加している「st.BREAK」のパラパラ漫画シリーズ、大橋学の「ぱらぱらBee魔an①」。

「さり気なく高度なテクニックを使っていることを、北久保さんが唯一分かってくれた!」と大橋が喜んでいる・・・。という情報を元に、北久保さんが司会を務めた「ちびねこトムの大冒険」トークイベント終了後、ぱらぱらBee魔anについての感想を独占インタビュー(!)せてさせていただきました。

北久保弘之さん独占インタビュー!ぱらぱらBee魔an①を語る!

―大橋学の「ぱらぱらBee魔an①」(st.BREAK)ですが、北久保さんはどのような感想をお持ちですか?―

北久保:実はパラパラのシリーズで自分は3回締め切りを落としてるんですよ。1回目2回目は仕事で間に合わなかったんですけど、3回目の締め切りを落としたその間接的な要因になったのが大橋さんの描いたパラパラ漫画なんです。

パラパラ漫画って今までいろんなアニメーターの人が挑戦して、いろんなタイプがあったんですけれども、大橋さんのは他の人達と全然次元が違うんですよ。

皆はどれだけ絵をカッコよく描けるか、どれだけカッコイイ動きを描けるか、自然に動かせるか、動きでどれだけ注意を引けるか、完成度とか、絵の巧さ、動きの巧さっていうものでパラパラ漫画を描いているんですけど、大橋さんのは全然違うんです。

ここでこんなことがおきてここがこうなった時に、面白いでしょう?みんな驚くでしょ?こんなことしちゃったりして。え!この後どうなちゃうの?みたいな、そういう我々が忘れちゃいけない「誰のために描いているのか」、ということを、大橋さんのパラパラ漫画だけが唯一それをやっているんです。自分もそれまでこういう方向で描こうと思っていたんですけども、大橋さんのパラパラを見て、あ~ダメだ!俺こんなの恥ずかしくて出せない!ってこの冬コミの締め切りをブッチギッちゃったという(笑)

―原因の一つにもなったと(笑)―

北久保:まぁ大橋さんに責任転嫁する訳じゃないんですけどね。描けなかった自分が悪いんですけど(笑)

―高度なテクニックというのはその辺のことなんでしょうかね?―

北久保:例えば子ども達が戯れるとか、ボートレースのボートがカーブを描いて行く、ワンシークエンスを取って描くというのは、その中に上手い下手の差はもちろんありますけどアニメーターであったら誰でも描ける訳なんですよ。

でも大橋さんはパラパラ漫画という限られた枚数(100ページ)の中に、これがこうなって次にこんなことやって、まさかこんなことをやるとは思わなかったでしょ、ふふん♪ みたいなことをガンガンぶち込んで Too Bee Continue! みたいな。これは凄い!と。要するに見ている人間を誘導する能力、そこが高度です。

他の人達の作品は完成度を求めています。完成度という点で言うならば、もっと丁寧な線を引いたりとか、デッサンをきちんと取ってリアルな絵で動かしてる人もいるけれども、そんなことじゃないんだよ、と。下書きのラフな線が残っていても、「ほら、動かしたらこんな風に見えるでしょ、面白いでしょ?」っていうのを見ている人に語りかけてくれるんですよ。

―なるほど。重複しますが、このパラパラ漫画の見どころはどこだと思いますか?―

北久保:めくるまで次に何が来るかが楽しみ、っていう。めくれば分かる!めくらないとワカラナイ!

―最後に大橋学にメッセージをお願いします!―

北久保:中卒アニメーターの大先輩であって、自分の生まれた年からアニメーターである大橋さんには運命的な繋がりを感じるぐらい凄い方だな、と大尊敬しています。

大橋さん自身偉そうな態度をしない方で、凄く物腰柔らかく接してくださるんで自分は調子こいている部分があるとは思うんですけど(笑)15歳でアニメーションの世界に入るっていうのは普通の人には分からないだろうし、大橋さんだったら分かってくれる訳で。自分がアニメーションをやってきたのは37年だけれど、大橋さんは自分が生まれた年にはアニメーターになっていて、という凄く運命的なものを感じるんですよ。

いつまでもお元気で、みんなを楽しませ続けて欲しい。自分は大橋さんが残してくれたものの中から大事にしなきゃいけないものをいっぱいいっぱい持っていきたい・・・。

 

以前大橋さんにも言ったんですが、大橋さんが「金の鳥」で描いた原画で金の鳥が酔っぱらってこう~なっている処理を、自分が監督した「ゴールデン・ボーイ」第一話の中でそっくり同じようにオマージュとして使ってるんですよ。大橋さんが我々に見せてくれたもの、っていうのを自分の作品の中で生かしていきたい、次の世代にバトンリレーしていけるように・・・そういう風に思っています。いつまでもお元気で!

北久保弘之(アニメ監督、アニメーター)

機動戦士ガンダム(TV)15歳で動画デビュー。

ロボットカーニバル(監督・シナリオ・絵コンテ・演出・作画監督「明治からくり文明奇譚~紅毛人襲来之巻~」)、うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー (原画)、 老人Z (劇場映画、監督・絵コンテ)、BLOOD THE LAST VAMPIRE (劇場映画、監督)他多数。

北久保さん、ありがとうございました!

インタビュー:syo-chan

音声録音:Ono_jin