· 

さ魔よい50原画展招待者限定トーク後編

さ魔よい50周年記念原画展にて開催された、招待者限定トークショーの後編です。
2013年9月7日 企画・主催/日本アニメーション文化財団、アニドウ・フィルム 会場/ギャラリィ・ゴーシュ 司会/小林治さん

 

小林 大橋さんはガンバの原画で関わられてますけど、あの作品は小林七郎さんの美術が凄く特徴的だったと思うんですけど、原画の方と美術の方との接点はあったんですか?

大橋 俺より知ってる人はたくさんいると思うんだけど、どっかで小林七郎さんが芝山さんのことを凄く褒めてるコメントを見て、確かに芝山さんのレイアウトを再現する能力というと俺が言うと失礼になるけど、小林七郎さんはキャッチの仕方が上手い、得意ですよね。

あそこに世界昔ばなしのトロイの木馬が展示してあるんですけど、美術は小林七郎さんなんですよ。あの時も本当は変えちゃってもいいのにわりと意図通りやってくれるんですよ。

自分がビックリするくらい変貌したら喜ぶ、っていうのは分かります?意図通り、っていうのと予想に反して凄いよ!っていうのと二通りあると思うんだけど、七郎さんはキャッチしたら意図通りやります。

だから受け取った相手によると思う。出﨑さんだったり芝山さんだったり、意図通りだったかどうかは出﨑さんとの三角形みたいな感じかな。

小林 七郎さんとはあまり直接話されたことはないんですか?

大橋 ありますよ。劇場のコブラなんかは打ち合わせにはだいたい出てたし、家なき子は出なくなっちゃったけど最初の頃は大体出ていました。

小林 どういうやり取りをされたんですか?

大橋 一生懸命聞いて、頭の中にメモとってとにかく誤解のないようにちゃんとやる人ですね。家なき子は出﨑さんが総合的にまとめてレイアウト打ち合わせってのをやるのね。レイアウトがいったん出来たところで立体の引きスピードを出すために打ち合わせをするんですが、だけど立体のスピードは出﨑さんの頭にしかないんですよ。

小林 家なき子ってご覧になってる方(挙手を促す)・・・・多いですね。家なき子って3Dアニメって謳っててブックのスライドが多いんですよね。スライドの計算で美術の幅が決まるからって話ですよね。

大橋 そうです。誰かが家なき子はマルチプレーンじゃないか?って言ってたんだけど、あれは99%密着です。引きスピードは。あの当時は極秘でした。極秘のグラフがあって、アニメーターにも社外秘のメモリの一覧を一枚ずつコピーでくれたんです。それをマッドハウスで作ったの。今でも持ってますけど、今はあんまり使わないけど役に立つ時はあるよね。

小林 計算で出した速度がってことですかね・・・?

大橋 L字型(縦ライン横ライン)になっててここを何ミリ引いたら何センチ必要かってのが長さ分だけパッと出るんですよ。何秒で0.25ミリ、だったら、何10ミリ分を足す、って言ってスタンダードに紙を足すんですよ。(そうすると大きさが出る)だんだん上の方にいくとスピードを速めて、10秒あったらこれ位の紙の長さっていうのがパッと出るんで原図が描きやすいんですよね。

 

~大橋学による補足~

 

ブック(BOOK)下面の背景の手前にある草や木の事。間にキャラがいる時必要になる。

マルチ(マルチプレーンカメラのこと)1番下の面から上に何段階も間隔を開けて撮影出来る撮影台の事。

密着(同一な面で重なった)背景と数枚の重なりブックの事。

 

大橋 杉野さんの話する?30年前の杉野さんのことを語ったインタビューをアトリエCLOUDが再現してくれたんだけど、2ヶ所ほど間違えてる部分があって。20代の会話なんでね、宝島つまらないですよ、なんて言ってるんだけどあれは自分がやったオープニングエンディングのことであって本編をつまらないですよとは言ってないからね。あそこはちょっと誤解を受けやすいかな、と思ってね。

小林 オープニングエンディングいいじゃないですか!

大橋 やけっぱちで描くと不思議な力が働くみたいで、もうどうにでもなれ、やけのやんぱちで描いて後は知らんぞ!ってそういうのは5年に一回くらいあるんです。

小林 時間が無かったとか、好き勝手やっていいよとか。

大橋 まぁ、それもあるけどね。塗り分けもないし、線もきっちり描くっていうのがじれったくなって、ええ~い!ぐちゃぐちゃ~!ってビリビリ破くとか、そういう頂点までくるとデタラメを描きたい、って思ったところが一致したのがあの宝島なんですよ。

小林 それは出﨑さんの求めてるものと大橋さんのやりたいものが重なったんでしょうね。

大橋 合致したんだと思うね。正確にはあと半年くらいで50年なんですけど、アニメから離れようとすると何か引っぱられるような仕事が来るんですよね。それは振り返るとポイント的にハッキリしてるの。ジョーもそうだしガンバも宝島も家なき子もそう。5年にいっぺんぐらいの割り合いで辞めた~い!ってなるんですけどどっかからちょんちょん、って糸を引くように声をかけて来る人がいるんですね~、不思議だよ~。

小林 「これ面白そうなんですけど。」「これ大橋さんに合うと思うんですけど。」みたいな。

大橋 それが嫌だって言えない要素があるんだよね。微かに糸みたいなものが繋がっているから、チョイチョイって引くと辞めようとしても手繰っていくといい仕事だった、って。

小林 それは嗅覚で分かるっていうか大橋さんが好きそうな作品を餌にして持ってくるっていうか。

大橋 ガンバの前にある作品に関わったんだけど、どうしてもこれはやりたくない、こんな大変なの出来ない、って本気で思ったのね。そうしたらマッドの社長のおおださんから電話かかってきたの。「大橋くんに向いてるの(ガンバ)あるんだけど~~」って。本当に向いてるかはどうかな?って思ったんだけどね、結果は良かったみたい。

その作品は夏の暑い中小さなアパートで打ち合わせをしてね・・・。ある有名な都市が崩壊していくっていうなんていうコンテを描くんだ?っていうような10カット頼まれたの。1カット1カット何この大変なのは?って思ったね。劇場だったら分かるよ?テレビでこれをやるの?って。これが出﨑さんだったらここは波がこう来てストップモーションで、って。それがないんだよね、動きっぱなし!

小林 なるほどなるほど(笑)

大橋 だから頭の中変になった。家に持って帰って数カットやり始めて、少ないカットなんだけどね、も~やりたくない!って(笑)そうしたらおおださんから電話かかってくるんだよね。じゃぁもう返しちゃおう!って(笑)返したっていうのは50年のうち3回位しかないね

小林 それは返しちゃったんですね(笑)

大橋 ほんとに。

小林 どうなったんだろう、止め絵になったんじゃないかなぁ(笑)

大橋 止めで見せるべきだよねぇ~。

小林 いや、分からないけど(笑)

大橋 だからその辺は出﨑さんの方では上手く出来てるんだよね~。

小林 大橋さんあしたのジョー2はかなりやられてますよね。

大橋 何かに書いてあったのを読んだけどあしたのジョー2は杉野さんにも出﨑さんにとっても絶対に必要な物だったんだよね。俺も同じく、ジョーは絶対にやらなきゃ、って思ったのね。当時テレビの前に釘付けになるほど夢中にさせてくれたんだからね。

だからあんなぷるに行きました。そこに森本君と福島さんがいて、一軒家で8人くらいのメンバーでやってたわけですよ。それはシリウスの伝説が終わった後です。

小林 シリウスの伝説は波ばっかり描いたんですか?

大橋 黄色と青の水の精、火の精の戦いのシーンがメインです。

小林 あ、エフェクトじゃないんですね?

大橋 え~とね、90%色トレスなんだけどあそこだけマシントレスなんですよね。だから自分の線に近いものが出てるの。他にプロローグシーンのために作ったのが木の板のお菓子ケースの中に紙粘土を詰めて、半分立体にしたのがタイトルレリーフになっています。それがシリウスの最後の仕事でした。

小林 それもやられたんですか?

大橋 はい。そのレリーフはアパートの暗くした押入れに入れおいてね。完成したことを伝えたら監督の波多さんが来てくれて、照明を真っ暗なところからだんだん明るくして見せたの。暗いところからだんだんレリーフが浮かび上がってくる、っていうね。そのレリーフはそのまんまタイトルに使ってくれて、それは喜んでくれましたね。

今なら写真に撮っておくんだけど結局一枚も撮ってなくって、そのままサンリオが持って行っちゃって戻ってこなくって。原画も戻って来てないのが多いので・・・今回はもう本当に!宝島、ガンバ、もちろんジョーもだけど、戻すっていう習慣が今までなかったのかな~?みなさん原画どうしてますか?聞きたいよ俺~(笑)探すの困難だったから、やっとこれだけ集めたのが今回の原画展なのね。

小林 僕の友人の、結城信輝っていう人は全部回収してますけど(笑)。普通はやっぱり描き終わったらスタジオが持ってて個人には返してもらわないですね。言えば戻してくれるのかな?

浜崎 自分で自主的にコピーするなりしないと行ったきりですね。

小林 あれってどうなるの?捨てられちゃうの?

浜崎 作品によっては管理してるってのは聞いたことあるんですど、それが確かかどうかは分かりません・・が。

小林 夏のソラの大橋さんの原画戻してもらえばよかったな、あれカッコよかったんだけどな。

大橋 だからラフの段階のは残ってますよ。(夏のソラの)鳥の一枚があそこのケースに入ってます。原画は描いてエネルギー使い果たしたら終わりですよね。

浜崎 潔いですよね。

大橋 だからシートをパタンと畳んで挟んだら終わりなんですよ。挟んでハイ、ど~ぞ、って。福島さんも言ってたけど「途中で見られるのは嫌だけど描き終えてシートに挟んだらもうそこからは誰に見られてもいいんです。」って言ってます。あれ、俺も同じ。(挟んだら)終わりサインなのね。書き終えた物を綴じて提出。もう誰が見てもいい状態なの。

小林 僕は始めからバリバリにアニメーションをやってたわけじゃなく途中でコマーシャルやって戻ったりして入ってるからあんまり知らなかったんですけど、アニメーターの方の机の上に置いてある原画って他の人も勝手に見るじゃないですか。あれって凄いな、って思って。え?見ていいの?って(笑)

大橋 位置変えないようにネ(笑)

小林 え、みんな勝手に見るんだぁって思って。あれちょっと僕驚いたんですよ。

大橋 いない所ででしょ?

小林 もちろん。こっそり見ちゃうのが、え?!とか思ったんですよ。

大橋 随分脱線しちゃうけど大塚康生さんの原画俺見てるからね。

小林 ホルスの時ですよね?大塚さんの原画を見たりして動きの勉強になったりしたんですか?

大橋 うん。今日は(大塚さんのことに詳しい)叶精二さん来るのかな?叶さんと俺と食い違ってるとこがあって、大塚さんの冒頭のオオカミのシーンね、叶さんが聞いているのは大塚さん本人はやっていない(というより宮さんがやっている)って言ってるんだけど俺は見てるんですよね。で、宮崎さんはその時点で岩男を中心にやってるから大塚さんのはずなんです。だけど叶さんが大塚さんに聞いたら「僕はやってないよ、あれは宮さんだよ。」って言ってるからね。俺が同時期に見ている範囲だと岩男が宮さん、なんですけどね。オオカミは二人でやってるんですかね~?実際は。その後大塚さんは怪魚シーンになるんですけどね。トップがオオカミのシーンだからいきなりクライマックスを描いてるような原画なんですよ。

小林 凄くキレがいいですよね。バツーンと止まって。

大橋 机は今ほど大きくなくこんな小さい机で大塚さんはやってるから、はみ出して奥に増えてく紙を繋げて大判でパン作画していくからパラパラはめくれないんです。だから分からないようめくって見たんです。

怪魚のシーンはスタンダードサイズが多かったから見やすかったですよ。怪魚がこうーなっていくところ。

小林 死んだふりするとこ?

大橋 うんそうだね。あの頃はサイボーグ009と通路挟んで旧館で太陽の王子の部屋があったんで、夜中になると社員の人は誰もいなかったんですよ。

小林 長編班は夜いなくなるのかな。

大橋 残業すると食券一枚もらえるんで、19時くらいまで仕事して帰る感じでした。食券はせいぜい40円でしたけどカレー一杯食べられます。随分脱線しますね(笑)

友永 それで撮影所に食べに行くんですか?東撮ランチってやつかな。

大橋 そう、さすがに高倉健さんみたいな大物は来ないだろうけど、他の俳優さんたちと一緒に食べる感じの食堂ね。

 

時間は大丈夫かな?杉野さんの話に戻りましょうか。杉野さんは皆さん知ってますよね。あしたのジョーのキャラクターや宝島をやった杉野さんは絵はもちろん上手いんだけど、人との付き合いをあまりしない人ですね。いつも黙々と描いてるような人なんですよ。

小林 あまり表に出ない人なんですよね?

大橋 それでね、ちょうど30年前のインタビューの話だけど、その時自分は山に例えることが多かったんだけど杉野さんはたまたま川に例えていたの。

これは自分が思うのだけど、杉野さんを川に例えると最初小さな笹の葉の船の杉野さんがいて、どこか小枝に引っかかってたのね。それ位ささやかな杉野さんがいて、その笹の葉の船が動くように拾ってくれたのが真崎守さんであり虫プロの人たちであり。そして知らないうちにまた笹の葉の船が動き出して。

でいろんな経過と共にお椀の船になって、現在は帆船ぐらいになってると思うの。でも乗組員でもなく船長でもなく船室の下の小さなアトリエでそこから一歩も出ないような感じが現在の杉野さんかな~って。

笹の葉の船が宝島書下ろしのあの位の大きさの帆船にはなってると思うんだけど、船長が出﨑さんだとすると、船長はもういないでしょ。だけど杉野さんは船長になるタイプじゃないと思うんですよ。

小林 存在が大きくなってるってことですか?

大橋 周りの乗組員は多いと思うの。多いけれどたった一人でアトリエの中にいる感じですね。それでガイコツになるまで描いてるんじゃないか?って30年前俺が喋ってるんだけど考えると今でもそう思う。

小林 今劇場作品の作監とかやられてますよね?

大橋 5才半くらい年上なんですけど仕事のやり方は変わらないと思う。きっと良い仕事が与えられてないんだよね。有名すぎて頼まないのかもしれないけど頼んでくださいよ。

小林 あ、俺ですか?今ちょうど手塚プロでやりたいと思ってるのがあるんで、じゃ、杉野さんにお願いしてみようかな(笑)

大橋 出﨑さんという船長がいなくなっちゃったので誰かいたらいいな、って思うんだけど自分で船長になってやろうっていうタイプではないので、やっぱりいいパートナーがいれば年は関係なく出来ると思いますね。

小林 大橋さんは杉野さんのあしたのジョーに惹かれたじゃないですか。それは杉野さんの絵の上手さだったんでしょうか。

大橋 絵の説得力だね~。俺は彷徨いの酷いアニメーターだから、俺と杉野さんとなら比較することが出来るんですよ。比較はいいことではないけれど仕事時間は俺の2倍、12時間は当たり前、俺は6時間だけど、毎日はやってないからね。そこで単純に毎日やってる杉野さんと比べても2倍、時間で計算しても3倍くらいはやってるんじゃないかと思うの。

小林 大橋さんはあんなぷるの時からそうなんですか?

大橋 そうです。杉野さんから俺を見るとね、大橋君はおはようって来てもすぐいなくなるんだって。遊びに行っちゃうのね。それで「よくそんなにお茶のみに行ってよくそれで仕事が出来るね?」って(笑)だいたいね、俺にチクってするのが杉野さんなんです。

で、杉野さんをチクってするのが出﨑さんなんです。そこがさっき話したチクっていう関係がいるといいな~っていう。

優しいことじゃなくってキツイこという人が身近にいると、いい関係なんですよね。それをソウルメイトっていうんです。だから、いいねいいねって褒め称えてくれる人が傍にいると、それはあんまりいいお友達ではないです(笑)出﨑さんって人は杉野さんをチクチクやれる人だったのね。

小林 いい時は褒めたいんですけど(笑)

大橋 うん(笑)

小林 でも今回のはあんまり良くないんじゃないの?なんて言える関係の人は限られちゃいますよね。

大橋 出﨑さんは杉野さんには直接言うんですよ。ただ出﨑さんは俺に言う時は陰に回って言うんですよね~。

小林 出﨑さん大橋さんには直接言わないんですか?

大橋 イイも悪いも回ってくるの。こう言ってたよ、良かったよ、とかね。

小林 出﨑さんが杉野さんにキツイことを言う、っていうのは僕も聞いたことあります。

大橋 杉野さんは俺にキツク言いますよ。俺も年上と思わないでけっこう言っちゃいます。だから関係としては成り立ってるんだけど。近々また遊びに行きますよ~って言ってあるんで。それでね、杉野さんのことを纏めるとね、30年前のインタビューの時も思ったけど有名になって賞をもらっても杉野さんは全然変わらない、動じないっていうのを感じたんですよね。

小林 偉そうにならないってことですかね。

大橋 他人に認められることは全く関係ないんだなって20代の時からそう感じてたの。今でもそれはあってね・・・。杉野さんが俺のことを褒めてくれることもあったんですよ。

小林 いつ褒めてもらったんですか?

大橋 まず宝島(OP&ED)を面と向かってね「あれいいよぉ~!」って言ってくれたの。その時俺は拗ねてたもんで、あっそう~って感じで答えちゃったの。

小林 (笑)ホントは嬉しかったんでは?大橋 振り返ると嬉しかったんだよね、きっと。

小林 あ~(笑)その時シラケ世代ってよく言うけどクールだったんですか?

大橋 そう、クール。で、遠回しに出﨑さんも褒めてくれたしね。

小林 褒めるのも遠まわしなんですか?

大橋 ま、出﨑さんがそう言った時に俺が傍にいなかっただけかもしれないんだけど「出﨑さんがこう言ってますよー!」ってね。まぁその時傍にいれば隠すことなく俺に言うとは思う。ただ調子悪い、っていう場合は遠回しに言うんだよね。

小林 ネガティブなことは遠回しに言うんですね。

大橋 そう、目の前でキミ、調子が悪いね!なんてなかなか言いにくいでしょ?だから遠回しに言うの。だからイイも悪いも評価は全部回ってくるのね。

劇画バカボンの時ね。出﨑さんが芝山さん宛てに「この大橋さんの感じがいいのでそのまま生かして修正入れないで下さい」って直々にシートにメモって書いてありました。

小林 劇画バカボン面白いですよね(笑)天才バカボンの中の1本のサブタイトルが劇画バカボンなんですけど、劇画なのだ!で絵が劇画になるという(笑)笛を吹き終わらないと弾が撃てないんですよね(笑)

大橋 3ヶ月くらい描き続けられればいいですけど、作画は一ヶ月かからないで終わっちゃうからね。終わったとたんにこういうのもう一丁!って言いましたよ(笑)ああいうのはやりたいですよね(笑)

 

小林 そこによなよなペンギンが展示されてますけど、3DCGアニメーションのりんたろうさんが監督された作品で寺田克也君がキャラクターデザインなんですけど、これって実際に作画の絵が出るわけではないですよね?

大橋 本編で2カット出ました。

小林 それの作画なんですか?

大橋 CGの前の素材作画ですね。この主人公の歩きと走りと基本動作とペンギンダンスとホビット(妖精)たちの基本的な会ったら挨拶するっていうフリをりんさんに頼まれたのね。

小林 それって原画を描いてシートをうたれて動画まではしてないんですか?

大橋 いや、動画みたいな原画を描いて、って言われたの。中を入れない原画。今回全部は展示出来ないんだけど円を描くようにペンギン踊りするシーンをアドリブで一周するのを150枚くらい描いたんですけど、それはロングで使う予定だったの。今日もペンギン、明日もペンギンって言いながら踊りを踊るっていう、それが全体は使われなくて一部分しか使われなかったみたい。

小林 大橋さんはご覧になりました?

大橋 初号だけ見ました。もう一回観たいな、と思ってます。

小林 動きの印象とかは。

大橋 やってる間は俺、りんたろうさんに絶賛したんですよ。オリジナルでね、これは成功すればいいですね~って言って。仕事としてはちゃんとやりましたね。で初号を観て、いいなぁ、とは思うんですよね、夢があって。いいなぁとは思うんだけど、成功したかどうかは・・・。

小林 大橋さんが思うように動いていましたか?

大橋 画面が暗過ぎるという印象はあったね、普通にテレビで見えなくなっちゃうような気がして。

小林 僕も試写で観てるんです。

大橋 自分の中の作品ランクってないんですけど、いい方の香りの部類には入ります。

小林 野心的な作品で、作画のアニメの感じを3Dでやろうっていう意図は共感出来て、僕もマッドで同じようなことをやってたんです・・・それで参考になるかなって思って、試写で観たんですけど、何ていうかちゃんとしすぎちゃってて、リミテッド感のあるアニメ・・・作画アニメっぽくはなかったですね。ストップモーションアニメっぽいなと思いました。

大橋 昔みたいにね、ゲリラっぽく、あまり完成された作品を作って欲しくないね。

小林 (笑)

大橋 自分はいい加減なアニメーターだからアニメ界が一度ぶっ壊れたらいいと思ってますね。アニメスタジオが次々と巨人に踏まれて崩壊していくと。大友さんのアキラみたいに東京が砂漠のようになってアニメスタジオだけが潰れていくと。なんか出来上がりすぎてますよ。新しく入ってくる人に夢があればいいですけれど、がんじがらめのキャラ表と、システムと。

昔みたいに日本のアニメを作りたいな、っていう基本スタイルがあって、アニメ界がワクワクするような感じだといいね、今それがないから。どうです?友永さん、何でも最初ってワクワクしてたでしょう?今もあるかもしれないですけど。

友永 いや~昔はね。

小林 今は大変な細かいの描かなきゃいけないんですよ友永さんも。

友永 そう(笑)非常にディティールも細かいしクオリティも高いんでしょうけど、しんどくなってきましたね。楽しむって感じじゃなくなってもう・・・だからさっき言ったキャラクターなんかもカッチリしてるし絶対壊すな、ってなってるでしょ。昔の木村さんがやってたようなおおらかな作り方じゃないですから。

大橋 友永さんはリングに上がるような感覚ではなく描けるんですか?

友永 いやぁ、描けないですよ。若い作監にキャラクターはよろしくお願いします、って。動きだけは押さえて、何とかしてもらおうかなぁ、っていう。

大橋 で、小林さんも浜崎さんも監督さんも兼ねてるから何で監督をやるのか?って言うと変だけど聞いてみたいんだよね。

小林 聞いてみたいですか?(笑)浜崎さんなんで監督やるんですか?

あ、でも僕BECKって作品で浜崎さんに一本コンテ演出やってもらったんですけど、凄く映画っぽい作品を作るな、って思いました。僕も、もともと映画が好きで、そういう実写みたいな指向が自分にもあるので、浜崎さんには大事な回をやってもらったんですけど。浜崎さんは映画好きな部分と、監督をやることと関係あるんですか。

浜崎 監督やコンテや演出するのも好きな映画に多少なりとも影響されるのは当たり前だと思いますね。今はそんな仕事が中心ですが、元々はアニメーターなので・・ま、その都度に応じて原画も描いてます・・まだまだバリバリの現役野郎ですから(笑)

小林 上手いアニメーターですよ。

浜崎 いえいえ。

大橋 監督になると・・・

小林 あ、そうか。好きなことが出来る!

大橋 好きなことが出来る?

浜崎 基本的には・・そう、ですね。それと制約によって限定された中で、好きなことを探さなければならないことが多くありますね、それが自虐的な楽しさになることもありますが(笑)

とにかく好きなことをやってるという意識を持ってないと出来ない仕事です。監督が楽しんでなく仕事していると、すぐに周りに見抜かれます・・それが、そのまま現場の各スタッフさんのモチベーションにも影響しますので、好きなことを率先してやることは大事ですね。

大橋 アニメーターのことは考えますか?

浜崎 もちろんです、作品はアニメーターあってのモノですから。要求の基本としては自分でも描けそうかなぁ、っていうところにラインを置いてる・・かな?巧い方多いですから、自分は最低ラインとして・・そういうところで考えたり、さらに特別なカットやシーンの内容に合わせたスペシャリスト・・あいすみません、いきなり直球なご質問で、なんだか分からない言い方になりました。

小林 最低ラインじゃないでしょ~(笑)

大橋 いいチームや仲間を選択する立場にいますよね。

浜崎 やはりチームということでは単に技術的に上手い人が居ればいい、とは思えないところがありますね。チーム作るその時点でそのまま作品の良し悪しが決定づけられるようにも思います。仕事そのものもそうですが、仕事を一緒にやる仲間という環境作りもしっかりと、ということですね・・・小林さんも同意見だと思いますが。

小林 さっき大橋さんも金の鳥の時仰ってましたが、共通の価値観のもと、ツーカーで映像を追っていける人達とやったから楽しかったって。

やっぱり価値観がずれちゃうと、いくらテクニカルに絵が上手くても、面白いことを一緒に「面白いっすね!」って言ってくれないと、そこでテンションが下がりますよね。

浜崎 その通りです!

大橋 うん。今回ね、原画を探した時にいろんな記憶がそこに入ってるってことがハッキリしたのね。その原画を見ただけで嫌なこともパッ!て蘇ってきたの。こんな嫌なことがあったなぁ~ていうのがすぐ分かっちゃうんだよね。

小林 ああ~なるほど。

大橋 逆にこんな面白いことがあったよ~!っていうのも原画の中に染み込んでるんですよ。それが、パッ!と出て来たから不思議だった。

小林 それって僕らが見ても分かるんですかね?

大橋 楽しいか楽しくないか?っていう雰囲気は分かるんじゃないかな。

小林 今回の原画展で大橋さんが来た人に見てもらいたいのははどんな部分ですか?

大橋 とにかく木村さんじゃないけど、「どうだ!こうやって動くんだよ!」パラパラパラ~って見せられないっていうのが一番ね。だからその表面の触りだけを一枚の額に収めたの。人間も外見だけでは全ての人格が分かるわけじゃないでしょ?でも人間も同じだから、いい洋服着てるね、いいファッションだねってそのぐらいの感じで一枚一枚を見てもらえたらいいかな。この裏側はどうなってるのかな?っていう想像も含めてね。

こればっかりは100%見せられる訳じゃないのでね。でもかなり努力した結果だな、とは思う。

小林 展示物、期間中に、ちょっと変わったりしそうですよね。。

大橋 いや、ここで終わりにしないと。それはなみきさんの都合で変わるかもしれないけど、もうね。

小林 なみきさんの都合なんですか(笑)なんかいっぱいお宝あるらしいんで。

大橋 出してないのは変更出来るかもしれないけど、家での発掘はもうやめたいな、って。

小林 あ、発掘は死んじゃうんでやめて下さい(笑)

大橋 終わり宣言をしちゃったからね。その作業をやってるだけで困難ですよ。

小林 せっかくなんでこの辺で質疑応答を最後にしましょうか。何でもいいのでありましたら挙手お願いします(笑)

友永 あ、いいですか?大橋さんは虫プロの長編3本、千夜一夜とかクレオパトラとか、そういうのは絡んでないんですか?

大橋 ベラドンナの動画だけですね。

小林 ベラドンナの動画ですか。綺麗なんですけどイヤラシイやつですね。

大橋 小さなスタジオで手塚さんの原画を見ましたよ。メタモルフォーゼのフレームいっぱい横たわる変型の原画なんですけど、これ手塚さんが描いたんだよ~って「ええ~~!」って見せてもらったんだけどシートが付いてないの。「シート付いてないですね?」って言ったら分からないそうで。お任せ、って感じらしいです。でも絵は抜群でしたね。

小林 僕は手塚さんが喋ってるのを動画で見ましたけど、自分でシートは書かないんだけどシートが付いてるのは直すって言ってました。ジャンピングは直してるらしいですよ。

友永 人が付けたのを直すんですか?

小林 そうです、タメが足りないからとか言って。ただ初めは書かないみたい。

大橋 いったん原画離れちゃうとシートの付け方が分からなくなるみたいで、出﨑さんもファイヤーGメンもそうだけどほとんど付けなかったですね。離れるとコツを忘れるみたいで。友永さんあります?あ、分からないか、離れてないから。

(会場笑)

小林 なんか宮崎さんは初めに全部シートを消しちゃって描き直すって聞いたことがあるんですけど。

友永 いやぁ、シートと絵をね(笑)カゲもカタチもなくなる(笑)

小林 (笑)

大橋 そのシートに隠れてる、ってさっき言ったんだけど、大事な要素が裏側に隠れてるっていうのが今回の原画展で見せられない部分なの。さわりだけ、想像力で観て下さい、っていうね。

 

小林 他に質問ありますか?

大橋 千春さんどうですか?何か質問ありますか?

小林 個人攻撃ですね(笑)

佐藤 009の頃はどんな感じだったのですか?

大橋 009はね、17歳でした。17歳半くらいでだんだん駄目になっていったんだけど劇場の怪獣戦争をやった時は面白かったですよ。

佐藤 どのくらいの作業量だったんですか?

大橋 全体が50分くらいですかね?中編の部類だから1時間は越えないと思うんですけどそれを5~6人で原画描いてたから、誰が多いとかではなく振り分けです。50分で5人いたら1人10分ずつですよ。木村さんも作画監督だけど原画描いてたから。やっぱり作監オンリーではなく原画も描く、っていうのが基本でした。

小林 テレビシリーズの009だと一日何カットくらい原画描いてたんですか?

大橋 あの頃はね、みんな自分の会社での振り分けよりもバイトで外の仕事をやっていて、最初のは適当にっていう(笑)バイトも給料のうち、みたいな感じで。

小林 (笑)もう時効ですね。

大橋 俺の場合は若くてまだ情熱があったからちゃんとやってましたけど、ちゃんとやらなくなっていったのが駄目になる境目の17歳の後半ですね。

小林 当時は原画をたくさん描くとお給料も良くなったんですよね。

大橋 うん、ノルマのラインを超えると全部お金になると。お金は良かったですよ。今はもう悪くなるばかり(笑)15歳で最高15万円ですからね。カレーライスが40円の頃ですからどう使っていいか分からなかったの。

友永 社員ではなく契約だったのですか?

大橋 契約者でしたね。大学の初任給が2万7千円の頃、だから2万7千円は最低ラインでもらってましたね。

小林 何に使ってたんですか?

大橋 給料日におふくろに渡してたんだけど、財布の中が給料日前に空になる事がなかった。いつもあるって状態。だから3歳~6歳上の先輩達に「大橋君貸して。」って言われて貸してました。

小林 そうか、未成年だから飲めないですよね。

大橋 キャバレーなんかのブームがあってね、みんな夜な夜な仕事終えて行ってましたね

(笑)でも俺は全く知らない世界でしたね。

小林 それ連れてってくれたんですか?

大橋 連れてってはくれないの。木村さんはキャバレーとかは興味ないから。あくまで美人喫茶だから。

 

小林 (爆笑)

大橋 女は女なんだけどね(笑)

小林 木村さん確かお酒飲まれないですよね?

大橋 吉祥寺と新宿にエルザって美人喫茶があって、新宿はカウンターバーでした。木村さんはビール飲めないからって連れ出されてね。

女性は当然木村さんのとこへビールをポンって置くんだけど、ちょっとアルコールを入れただけで目を真っ赤にするからね。俺の方へそっと「これ、飲んでくれよ。」って置いてね。それ17か18歳だから。

小林 もう時効ですね(笑) お酒は強かったんですか?

大橋 10代は飲んでました(笑)うちの娘たちも10代から飲んでましたね(笑)

小林 あ、そこは話さなくても(笑)

大橋 うちのお父ちゃんがね、美味しそうにビールとかワインを飲んでるもんでね、飲ませてくれるんですよ。この赤いぶどうのワイン美味しそうだなぁ~って。コップ一杯のビールは美味しかったですね~!小林さんもそろそろ飲みたくなるんじゃない?

小林 え!?僕もうさっきから飲んでるんですけど(笑)

大橋 ほんとだ(笑)知らなかった(笑)

(会場爆笑)

小林 最後に、ちょっと仕事が嫌になって現場を離れてた時って、何をされてたんですか?画集を出そうとか絵を描こうとか真面目なヤツじゃなくって(笑)放浪もされてるんですよね?

大橋 えっとね、結婚してからもあるし、一番は10代だねぇ、10代は乾いてるっていうか辛いよね。

小林 その時どうなっちゃうんですか?どこかに行っちゃうんですか?

大橋 うん~死ぬしかないっていう・・・

小林 うわぁ(笑)思いとどまってくれてよかったです。

大橋 恋も何もかも、っていう感じでね。世の中も何もかも。

小林 大橋さん若い頃長髪でカッコいいんですよ。多分もてましたよね?

大橋 ああ!そうだ、思い出したんだけどね。

(会場笑)

大橋 その頃の、中学時代の手紙からいろんな物が全部箱の中に入って出て来たんだけどね。17、18のあの頃、東映辞めて二人ほど困らせてたってのが分かったの。人生狂わせてしまったかもしれないって・・・。

小林 それは奥さまじゃないんですね?俺振っておいて汗かいてきちゃった(笑)

大橋 うん、申し訳ない、こんなに俺のことを思ってくれたのか、って二人ほどいて。幸せになっててね、って読み終わって思った。当然子供もいて家庭を持ってると思うので、願いました。

小林 罪な男でしたね。

大橋 だから一方的な想いって辛いよね、片方は気付いてないんだもの。

(会場爆笑)

小林 あぁ、でもモノを作る関係でも片思いは辛いですよね。

大橋 うん~そうだね。

小林 いいトコ持ってきましたよ!俺(笑)

(会場爆笑)

 

小林 ではそろそろ〆に入った方がいいかもしれないですね。大橋さん最後に一言。

 

大橋 今日は2日目でこれから始まるんですけど、気持ちとしては今日が初日です。

絵天の喫茶店と同じように準備が出来れば全てオッケーなんですよね。シートを閉じた、って状態で展示をしてるので、自分としてはどうぞご自由に、好きなように観て下さい、どこを観てもいいし、いちゃもん付けてもいいし。

原画も同じなんですけど、いったん自分で良し!って判子を押すんですよね。監督がいてもチェックする人が何人いても自分で判子を押した状態で渡すから、自分のOKサインが一番大事なんですよ。あちらに絵本を描いてる方が何人かいますから分かると思いますけど、自分が良い!となればもういいんですよ。誰が文句を言おうと。そこから直すなんて出来ないんですから。

小林 うん、そうですね。

大橋 そういう意味でこの展示も良し!かな、と。

ハンコ押しましたんで、楽しんで観て行って下さい、って思います。

小林 はい。では今日は長々とお付き合いいただきありがとうございました!

 

 

(会場拍手)

 

記事の公開にあたり、ご協力いただいた全ての方に感謝します。

\関連記事を読む/